【関連情報】サビレックスDSTシリーズは半導体業界にどこまで有効か ― その現実的な用途

サビレックスでは非沸騰式蒸留によってフッ酸(HF)、硝酸(HNO₃)、塩酸(HCl)を10pptレベルにまで浄化するDSTシリーズ(DST-1000・DST-4000)を製造しています。DST-1000は最大1L、DST-4000は最大4Lの酸を処理でき、高純度酸の提供が可能です。
この1~4Lという処理容量は、半導体工場の量産ラインで使用する大量の薬液を供給する用途には不足しています。一方、研究開発や分析、薬液の純度評価、高純度試薬の調製といった用途では、十分に活用が期待できる容量といえます。
半導体産業で使用される酸は、用途によって必要な量や純度、供給方法が異なります。製造ラインで大量に使用する酸と、製造工程を支える分析・評価部門で使用する酸とでは、求められる条件も同じではありません。
また、装置の最大処理容量が、そのまま精製後の酸の回収量になるわけではありません。実際の回収量や処理時間、酸の濃度、対象となる金属不純物の除去性能などを踏まえ、用途に適しているかを判断することが重要です。
処理容量と処理時間から考えるDSTシリーズの用途
DSTシリーズの利用の検討にあたっては、最大処理容量だけでなく、酸の調製にかかる時間も重要なポイントです。DST-1000・DST-4000の処理能力については以下のようになります。※処理能力は目安です。実際の処理時間や回収量は酸の種類や運転条件などによって異なる場合があります。
DST-1000
最大処理容量:1L
処理能力:約38mL/1時間
少量の高純度酸を必要とする研究室や分析室に適したモデルです。分析や評価に必要な酸を、使用計画に合わせて調製する用途に向いています。
- 加熱時の気泡が小さいため液面が乱れず不純物の取込を防止
- ヒーター内蔵、凝結用の冷却水も使用しないため設置および操作が簡単
- HI・MID・LOの3段階の温度調節が可能
- 接液部は全てPFAで成型

DST-4000
最大処理容量:4L
処理能力:約82mL/1時間
DST-1000よりも多くの酸を処理できるモデルです。高純度酸を継続的に使用する分析部門など、比較的多くの調製量を必要とする環境で活用が期待できます。
- 加熱時の気泡が小さいため液面が乱れず不純物の取込を防止
- ヒーター内蔵、凝結用の冷却水も使用しないため設置および操作が簡単
- 40~90℃の間で自由に温度設定が可能
- 接液部は全てPFAで成型
- 120V仕様

例えば、DST-4000で最大容量の4Lを処理する場合、単純計算では約48時間必要となります。(処理能力に基づく概算、実際の運転時間を保証するものではありません)
DSTシリーズは大量の酸を短時間で生産する装置ではなく、時間をかけて高純度酸を調製するためのシステムと位置付けられています。
ICP-MSなどによる微量金属分析では、試薬に含まれる微量金属が測定結果に影響する可能性があります。研究室内で高純度酸を調製できれば、分析に必要な量を計画的に準備できるほか、市販の高純度酸の購入コストや、開封後の保管・取り扱いに伴う汚染リスクを管理するうえで大きなメリットとなります。
半導体産業でDSTシリーズが貢献できる用途は

①半導体ウェハの製造ラインで使用する洗浄薬液
■用途は限定的
半導体の製造工程では、ウェハーの洗浄やエッチングなどに硝酸・フッ酸・塩酸が使用されます。しかし、量産ラインでは薬液を継続的かつ安定的に供給する必要があるため、処理量や調製時間を考慮すると、DST-1000・DST-4000を量産用薬液の供給設備として使用するのは現実的ではありません。
一方、少量の薬液を使用する工程開発や試作段階であれば、評価用の酸を調製する装置として活用できる場面があります。
②ICP-MSによる微量金属分析・汚染評価
■有望な用途
製造工程で使用する薬液や超純水、ウェハー表面などに含まれる微量金属を分析する際には、試料に由来する金属と、試薬や前処理器具から混入する金属を区別することが重要です。試料の分解や希釈、前処理、ブランク試験などに使用する酸についても、微量金属の含有量をできるだけ低く抑えることが求められます。
こうした分析用途では、量産ラインの洗浄薬液と比べて、必要な酸の量が限られる場合が多いため、1~4Lという処理容量は、研究室や分析部門で使用する高純度酸の調製に適した規模といえます。
③プロセス開発・材料評価・不良解析
■有望な用途
新しい洗浄条件や材料の評価を行う研究開発部門、試作ライン、故障解析部門なども、DSTシリーズが貢献できる分野です。
例えば、プロセス条件の変更前後で金属汚染の状態を比較する場合や、材料に由来する不純物を調査する場合には、分析に使用する試薬の純度管理も重要になります。
このような現場では、量産ラインのように大量の薬液を連続的に供給するのではなく、評価テーマや分析計画に応じて必要な量を準備する運用ができます。DSTシリーズは、こうした研究開発・検証用途に適した選択肢となります。
④高純度薬液メーカーの品質管理・製品開発
■用途や運用条件に応じて検討
導体向け薬液の製造メーカーや高純度試薬を扱う企業では、製品の品質評価や、微量金属分析に使用する酸の調製などに貢献できる可能性があります。
ただし、ここでは分析用試薬を調製する用途と、顧客に納入する大量の薬液そのものを製造・精製する用途を区別する必要があります。前者ではDSTシリーズの処理容量が適している場合もありますが、後者では必要な生産量や処理速度に応じた設備が求められます。
導入を検討する際には、使用目的、必要量、求める純度、運転条件などを整理し、実際の運用に適しているかを確認することが重要となります。
DSTシリーズの処理量は分析用途でどの程度の量なのか
例えば、分析室で1日に何件かの試料を処理するケースを想定してみます。
※以下は実測データではなく、用途を考えるための仮定です。
※装置の残液、回収ロス、ブランク試験などは考慮していません。
| 1回の分析作業で使う高純度酸 | 10mL | 25mL | 50mL | 100mL |
|---|---|---|---|---|
| 1Lでカバーできる作業回数 | 100回 | 40回 | 20回 | 10回 |
| 1Lでカバーできる作業回数 | 400回 | 160回 | 80回 | 40回 |
分析前処理では、試料の分解や希釈などに酸を使いますが、必要量は試料の種類、分解方法、分析手順によって大きく異なります。
例えば、1回の分析作業で高純度酸を合計50mL使うなら、4Lで単純計算80回分となります。DST-4000の処理速度を基にすれば、1Lの調製に約12時間かかるため、必要な酸を計画的に調製する運用が考えられます。
ただ、DSTシリーズでの蒸留対象となる塩酸・硝酸・フッ酸を同じ装置で頻繁に切り替えて蒸留することは推奨されていません。複数種類の酸を日常的に使う分析室では、装置の台数や運用方法も検討する必要があります。
DSTシリーズは半導体業界のどのような企業・部門に貢献できるのか
DSTシリーズの活用先としては、半導体メーカーの分析・材料評価部門をはじめ、プロセス開発部門、高純度薬液メーカー、分析受託会社などが考えられます。
それぞれの企業・部門における想定用途と、DSTシリーズの活用が想定される度合いを整理してみます。
| 想定される利用先 | 想定される用途 | 貢献度 |
|---|---|---|
| 半導体メーカーの分析・材料評価部門 | ウェハー・薬液・超純水の微量金属分析 | A |
| 半導体メーカーのプロセス開発・故障解析部門 | 試作評価、汚染原因の調査 | A |
| 半導体向け高純度薬液メーカー | 製品開発、原料・薬液の品質管理 | A |
| 半導体製造装置・洗浄装置メーカー | 洗浄プロセス開発、材料・薬液の評価 | B |
| 分析受託会社・材料分析機関 | ICP-MS分析用試薬の調製 | B |
| 大学・公的研究機関の半導体研究室 | 新材料・新プロセスの研究開発 | B |
半導体業界での活用を考える際には、半導体メーカーだけでなく、製造工程を支える分析・評価分野にも目を向けることが重要です。特に、微量金属分析に使用する高純度酸の調製は、DSTシリーズの特長を活かしやすい用途の一つです。
ただし、実際の有効性は、各企業の分析体制や運用方法によって異なります。例えば、ICP-MSなどの分析装置を自社で保有しているか、微量金属分析を社内で実施しているか、分析用試薬の調製を外部に委託しているか、などによって、貢献度や有効性は変わります。
まとめ:半導体の分析・研究開発を支える高純度酸の調製に
DSTシリーズは、1~4Lという処理容量や蒸留にかかる時間を踏まえると、半導体の量産ラインで使用する大量の薬液を供給する用途には適していません。一方、研究開発や分析、品質管理などの現場で、必要な高純度酸を計画的に調製する装置として活用が期待できます。
特に、ICP-MSによる微量金属分析では、試薬に由来する汚染を抑えることが分析結果の信頼性を確保するうえで重要です。DSTシリーズは、こうした分析に使用する高純度酸を研究室内で調製するための選択肢となります。
具体的には、半導体メーカーの生産部門よりも、分析・材料評価・プロセス開発部門などがメインとなります。また、高純度薬液メーカーの品質管理部門や、微量金属分析を行う分析受託会社においても、用途や運用条件によっては活用が期待できます。
半導体分野では、製造プロセスそのものだけでなく、その品質を支える分析・評価環境の整備も重要な要素です。高純度酸の調製方法を見直す際には、DSTシリーズも選択肢の一つとしてご検討ください。
サビレックス非沸騰式酸蒸留システム DSTシリーズ
非沸騰式酸浄化システムDSTシリーズは、1ppbグレードの酸を非沸騰式蒸留により10pptグレードに高純度化するシステムです。
フッ酸(HF)、硝酸(HNO3)、塩酸(HCl)を蒸留可能。DST-1000は1Lまで、DST-4000は4Lまで蒸留することができます。
加熱されて蒸発した酸は液面から緩やかに上昇し、上部のドーム部分で外気との温度差により凝結して直接回収ボトルに流入するため、外気から遮断された状態で、不純物の混入を極限まで低減した高純度酸の蒸留が可能です。
ヒーター内蔵で凝結用の冷却水も使用しないため、コンパクトで設置と操作が簡単で、接液部は全て高純度PFAで成型されています。





