人新世の海洋地層調査とPFA製容器の関係について
よく耳にする”人新世”という言葉
近年、人新世という言葉が頻繁に使われるようになりました。
地球温暖化などの気候変動や生物多様性の喪失など、人類の営み、主には化石燃料や化学物質の消費が地球環境に影響を及ぼしている現代の年代区分として使われています。
人新世の調査として、別府湾など世界各地で海底堆積物の調査が行われています。その調査・分析において、PFA製容器が重要な役割を果たしているのはなぜでしょうか。
海洋堆積物には、過去の気候変動、海洋汚染、生物の多様性変化、化学物質量の変位など、様々な情報が地層になって記録されており、場所ごと、層(年代)ごとに成分を分析することで環境に影響を及ぼす原因を明らかにし、対策に活かされています。
その中で、PFA製の容器は、化学的に非常に安定的で微量元素の溶出が極めて少なく、耐熱性・耐薬品性にも優れており、採取された海洋堆積物に与える影響がほぼないため、試料の保存に最適な容器として使用されています。
また、海底堆積物の成分分析にはICP-MSなどのプラズマ質量分析やクロマトグラフィー質量分析が用いられることが多く、分析装置に試料を導入する準備として、試料を酸で分解する酸分解と言われる前処理工程に使用されます。
海洋地質分析でPFA製容器が有効な理由
高純度
海洋堆積物中の微量元素や有機物を分析する際には、容器からの汚染が重大な問題となります。PFA製容器は高純度であり、試料への汚染リスクを最小限に抑えることができます。
耐薬品性
海水や酸、アルカリなど、様々な液体に耐えることができるため、様々な種類の試料の前処理や、分析に使用する薬液の保存に利用できます。
耐熱性
高温での加熱処理にも耐えることができるため、有機物の抽出や濃縮など様々な分析の前処理に利用でき、使用後の熱処理滅菌にも対応します。
耐久性
繰り返し使用しても変形や摩耗が少なく、繰り返しのオートクレーブ滅菌に対応するなど、長期的な使用に適しています。
まとめ
人新世の海洋地層調査において、PFA製容器は高純度・耐薬品性・耐熱性・耐久性といった優れた特性を活かして、海洋堆積物の採取・保存・分析に不可欠なツールとなっています。
PFA製品の利用により、微量元素分析、有機物分析、放射性物質分析などにおいて、より正確で信頼性の高い海洋環境のデータが得られ、人新世における地球環境の変化を解明するための研究が進展することが期待されます。